フォーカシング & フォーカシング・サンガ

あなたの中の“本当のあなた”は何を望んでいるのでしょうか。
その声を聴いたことがありますか?
その声は、鳴き声のよう、叫びのよう、呻きのよう、喘ぎのよう。
言葉にならないその声を聴き遂げて、意味を理解し、そして願いを叶えてあげましょう。
あなたと“本当のあなた”が一つでいられるように。

目 次

フォーカシングとは

 フォーカシング(focusing)は、哲学者・臨床心理学者のユージン・ジェンドリン(1926~2017)によって開発されました。

 彼はカウンセリングの大家であるカール・ロジャーズと共に研究する中で、カウンセリングが成功するクライエントはその話し方が立て板に水のようではなく、むしろ「えーと、うーんと」と言葉を探すように話すことを見出しました。

 私たちは言葉を探すときに、自己の内側を参照しています。そこに辞書のような物があるわけではありません。でも、今言おうとしている言葉がピッタリしているかどうかを何となく判断する”感覚“があるのです。この感覚にジェンドリンは「フェルトセンス(felt sense)」という名前をつけました。それは誰でも持っている感覚ですが、それを利用できている人と、あまり利用できていない人がいるのです。

 フェルトセンスは言葉だけでなく、行動や思考、今置かれている状況や環境などについてもピッタリ来ているかどうか感じています。例えばレストランでメニューを見ているときに「今何が食べたいかな」と迷うときにもこの感覚を参照するでしょう。新しく出会った人とどの程度の付き合いをするのがいいのかというときも参照しますし、とにかく生活のあらゆる場面で私たちはフェルトセンスを参照しています。

 一方でフェルトセンスをあまり参照できていない人もいます。誰かの指示に従うことを優先する人、周りの様子をうかがう人、決まりきった判断しかしない人などがそうです。もう何年もピッタリ来ない生活をしてきて、今さら変化させようがないとあきらめて違和感を封じ込めている人もいると思います。そして、価値観や欲求、感情に囚われているときもフェルトセンスを参照することができない状態です。

 フェルトセンスを参照すると“その場や状況にふさわしく、かつ自分らしい”選択ができます。言い換えれば、しなやかな生き方をする上での羅針盤のようなもの。これをしっかり利用しながら生きるための方法が「フォーカシング」なのです。フォーカシングは心理療法としてはもちろんですが、教育やスポーツ、ビジネス、さらには断捨離など幅広い分野で応用できる方法です。

フォーカシングの練習

 フォーカシングはどのように練習していけばよいのでしょうか?

 そう難しいことではありません。何か判断しようとしているときに、「はて、自分はどうしたいんだろう?」と少しの間立ち止ることです。たとえば今日はどの服を着て出かけようかと迷ったときに、少し心の内側を感じてみると良いでしょう。恐らくいろいろな考えや感情、価値観が押し寄せ、混乱してしまうと思います。だから私たちは立ち止まることを恐れて、あらゆる場面において「いつものパターン」に従って安易に思考し、選択し、行動してしまい、なんだかよくわからない違和感やストレスの渦中で生き続けることになるのです。

 それでも少し立ち止まって、本当はどうなんだろう、本当は今日何着ていきたいんだろうとただ感じてみることです。少しずつでもそういう場面を増やしていくと、日々の生活が少しずつ変わってくるはずです。

 ここまで述べてきたことが、あまりピンと来ない人は、残念ながらフェルトセンスをあまり活用できていない方なのかも知れません。下記のグループでのフォーカシング練習に参加したり、個人的にフォーカシングセッションを受けてみることで、ぜひフォーカシングを理解していただければ幸いです。

フォーカシング・サンガ(グループでのフォーカシング練習)

 心を高め合う仲間の集まりのことをサンスクリット語で「サンガ」といいます。「僧」の語源でもあります。

 「フォーカシング・サンガ」はフォーカシングを実践的に身に付ける場であり、同時に今抱えていることを仲間に聴いてもらうことで楽になることを目指す場です。3~10人で円座して語り合います。

安全・安心ルール

 フォーカシング・サンガには以下の「安全・安心ルール」があります。始まりの時点で皆で確認します。

守秘義務:この場で聴いた話を他所で話しません。

尊重:どんな気持ちや感情も尊重されます。

非暴力:変化や気づきを強要しません。その人の自発的な変化が
    尊重されます。

導入セッション

 最初は簡単なヨーガで体をほぐします。緊張が少ない状態の方が自分の内側にアクセスしやすくなります。そして10分間瞑想しながら、穏やかに内側を感じるようにします。瞑想中に思い浮かんだことなどを一人ひとり順番に語り、他の人は傾聴します。

メインセッション

 自由に語り合います。語り合いのきっかけとしては①自発的に語る、②「あなたの話をもう少し聴いてみたい」と促す、③誰かの語りに対して自分の内側から湧いている感想を伝える、この3つのアプローチが考えられます。

 安全・安心な場では自動的にフェルトセンスに触れながら話すことができるので、語り手は次第に本当に語りたかったことの核心に近づいていくことができます。そのように語り得たときに、何かが開けた感じ(シフト)を体験します。一人のメンバーの語りは他のメンバーのフェルトセンスを刺激し、次々と語りたいことが出てきて、次々とシフトを体験します。そのような場ではメンバー同士の信頼感が深まります。

振り返りセッション

 終了予定の時間の20分前くらいに振り返りセッションに入ります。3分程度瞑想しながら、ここまでのセッションがどんな体験であったかを感じ、瞑想後一人ひとり語ります。

フォーカシング・サンガに参加する

 フォーカシング・サンガは対面の他、Zoomでのオンラインでも毎月行っています。日程等は「イベント」をご覧ください。

フォーカシングを受けてみる

 フォーカシングを理解するには、実際にフォーカシングを受けてみることをお勧します。カウンセリングのお問い合わせフォームから、お申込みいただけます。対面でもZoomでも実施することができます。もちろん、セラピーとしてフォーカシングを受けることも可能です。

フォーカシングを学ぶ

 フォーカシングの知識や理論的なことは本や関連のサイトからも情報を得てください。日本フォーカシング協会フォーカシング・ネットワークのサイトからはフォーカシングに関する多くの情報が得られます。また国際フォーカシング研究所のサイトは英語ですが、フォーカシングの開発者ユージン・ジェンドリンの論文が多く掲載されています。

 日本フォーカシング協会に入会されると(年会費3,000円)、研修の機会が増え、また年次大会に参加することで全国に仲間が広がります。