「自分」とは「自」の領域

 「自分」という言葉は「自の分」と書きますが、分というのは領域を表しますね。この線からこっちは私の土地といった具合に、領域とか境界を表すわけです。

 皆さんの身体は皆さんの領域の内側にありますから自分です。考えや感情も自分の領域内です。皆さんの貯金も自分の領域内ですから自分が好きなように使えます。

 でも自分という領域の内にあるものは守らなくちゃいけませんので、執着が生じます。ここは自分の土地だ、自分の金だ、自分の考えだ、と声を大きくして守ろうとします。

 仏陀はそういう執着はよろしくないと考えたわけです。自分の領域内のものは管理する責任はありますが、基本的に自分のものではないと考えるように勧めるわけです。言ってみればリース契約しているようなものですね。それで「本来無一物」なんて言い方をします。

 あっさりしていていいと思いませんか。何でもかんでも自分のものだ、と溜め込むより。

 自分のものじゃないとしたら誰のものなんでしょうか。誰のものでもありません。強いて言えば空から生じたとでも考えたらどうでしょう。

 それで色即是空です。色というのは身体とか物のことですが、それは本来空から生じたものだから執着しなさんなということじゃないでしょうか。