感情消化力 -火を消すときは根本を狙う-
今、野外で火を燃やすといえばキャンプのときくらいですね。でも昔はよく焚き火をしたものです。この火を消すとき、火の上の方、つまり炎を狙って水をかけてもしょうがありません。燃えている木のほうを狙います。当たり前です。
だけど、私たちは感情の炎を消そうとするときは、上の方を狙っていませんか?上の方は感情任せの言葉の氾濫です。「そこまで言わんでも」とか「考えすぎでしょう」ということが、ボンボン、パチパチ弾けます。
しかし感情の根本は、まだ言葉になる前の、そして感情という形を取る前の、ムカムカ、ヒヤヒヤ、ヘナヘナ、ワクワク、ポヤポヤ、クサクサ、ドヨドヨ、ギトギト、グサグサ・・・といった身体的な感覚です。そう、ここに向けて水を掛けることで感情は収まります。
いや、ちょっと待ってください。水を掛けるってどういうことでしょう?それに、しばらく感情に浸っていたいことだってあるでしょうし。「怒りを原動力に…」なんてこともありますし。簡単に消していいのか、それに消せるのか。
感情に浸ること、喜怒哀楽の抑揚があること、それは人間的なことです。でもそれ故の苦しみもあります。感情に浸る自由があるように、抜け出る自由も獲得しておくと良いと思いますよ。いつまでも感情に浸っていると、見るもの聞くもの、どんどんその感情に染まっていってしまいますからね。
水を掛けるというのは、言い方を変えると、「消化する」でどうでしょう。「消火」じゃないですよ。食べ物を消化するの「消化」です。
ムカムカ、ヒヤヒヤ、ヘナヘナ・・・をどう消化するのでしょう。原理は簡単です。これをしばらく眺めてください。「この感覚、これはうーん、『ヘナヘナ』に近いかな」。
他に言い表しようがないので、「ヘナヘナ」と書きましたが、実際には言葉に表せない感覚です。この感覚を眺めているぶんには、言葉が炎のように燃え盛ることはなく、静かに集中していられます。そして次第に感覚そのものが穏やかで平易なものに変化していきます。そう、消化されていくのです。
だから大事なのは、静かに眺めていられる力です。これが感情の消化力です。
静かに眺めるためには、姿勢と呼吸が大事です。座って楽に背筋を伸ばし、静かにお腹で呼吸をしましょう。気持ちが落ち着いてきたら、あなたを感情的にさせる出来事や状況を思い出し、その感情の元になっているからだの感覚を眺めるのです。1分できれば上出来です。こうやって感情消化力を鍛えていきましょう。
未消化なままの感情は、おそらく生まれてこの方、からだのいろんなところに溜まったままになっていることでしょう。ですから、静かに座っていると、後から後から、いろんなことが思い出されては感情が揺さぶられます。
感情消化力がついてくると、だんだん長く座れるようになり、少しずつ未消化な感情が消化されていき、からだがきれいになっていく感じなります。心身の健康のためにもぜひおすすめしたい方法です。もちろん、これはセルフ・フォーカシングであり、心へのマインドフルネスでもあります。
食べ物は消化されて栄養になりますが、感情は消化されると何になるのでしょうか。やはり心の栄養になると思います。心にエネルギーを与え、深く広く成長させてくれると思います。だからいろんな出会いの機会を持ち、いろいろ感情を揺さぶられるのが良いのではないでしょうか。