視線でつながる人間関係

一心塾だより 第95号

 赤ちゃんは授乳のときに養育者の目を見ながら、その目の中に安心感を感じ取り、嬉しそうに声を上げ、その嬉しさに養育者も嬉しくなります。これが人が人を信頼し、関係を築く基本です。

 目を合わせることで、脳に関係性のスイッチが入ります。一瞬で相手の様子を感じ取り、また合わせ鏡のように、相手が自分に対して感じていることを感じ取ります。

 この関係性スイッチは意志でコントロールできません。気にすまいと思っても無理ですから、もしコントロールしようと思えば目を合わせないようにするしかありません。だから自分に自信がないときは人に会いたくなくなりますし、ひどいときは引きこもらざるを得ません。自信がないときは、出会った人が自分に対して向ける目線に耐えられないのです。特にその目の奥に自分に対して何かネガティブなことを思われているであろうことが想起されてしまい、耐えられないのです。

 同じことがSNS上でも起こります。自分について書かれていることは、自分に向けられた目線と同じなのです。しかも実際に文字として書かれているので、より辛辣なのは当然です。

 目線は強烈な刺激です。怒りや憎しみの感情を持ちながら人を見れば、相手には確実に伝わりますし、もちろん愛情も伝わります。ただ、この強烈な刺激に対する何通りかの抵抗方法を人は身につけているものです。箇条書きにしてみましょう。

  1. シャットアウトして引きこもる。(その後大体うつ的になります)
  2. 行動で返す。(憎しみには憎しみで、愛情には愛情で。躁的な感じです。これをやりすぎると後で①に移行することがあります)
  3. 適度に鈍感になる。(鈍感すぎるのも考えものですが、楽ではあります)
  4. 刺激を意識化する。(それによって刺激発信元の相手に適応的に対応できるようになり、相手もあまり刺激してこなくなります)

というわけで④が一番良い方法であることはおわかりでしょう。しかし長年①か②、または③の方法を取っている人はとても多いと思います。①の人とは視線が合いません。②の人は視線が強烈になりがちです。③の人は視線が定まらない感じです。それぞれ脳や自立神経の使い方が違っていて、その人なりのパターンが出来上がっています。

 しかし④の方法はどんなパターンの人でも練習によって身につけていくことができます。誰かの目線や、何かの刺激を受けたとき、何を感じたのか、どんな感情が湧いたのかについて落ち着いた環境の中で意識化するようにします。感じや感情に向き合うのはもしかしたら勇気がいるかも知れませんが、次第に慣れるものです。慣れれば④が近づきます。勇気が出ない人は、誰か信頼できる人に聴いてもらいながら向き合うとよいでしょう。

ヨーガ3分話

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