傾聴を学ぶ会は、カウンセリングに興味のある方であればどなたでもご参加いただけます。3~10人のグループで輪になって座り、聴き合う形で進行します。この会は「フォーカシング」という心理学的な考え方をベースにしていますので、継続的に参加することでフォーカシングを身につけることができます。
 傾聴を学ぶ会のスケジュールはこちらをご覧ください。

 傾聴を学ぶ会には以下の「安全・安心ルール」があります。始まりの時点で皆で確認します。

安全・安心ルール

  • 守秘義務
  • どんな気持ちも尊重します
  • 変化を求めません
    自然な変化こそが本物です。

 

 シャベラー

 最初に簡単なヨーガで体をほぐします。緊張が少ない状態の方が自分の内側にアクセスしやすくなります。
 そして10分間瞑想します。穏やかに内側を感じつつ、最近の自分の心身の状態や気になっていることなどに気づきくようにします。
 瞑想後に、一人ひとり順番に瞑想中の気づきについて語ります。その際に「シャベラー」と呼ばれるぬいぐるみを持って語ります。

 瞑想後の語りを聴くことで、いろいろ新たな思いがメンバーの中に生じているはずですので、メインセッションでは自由に語り合います。ただ、傾聴の練習も兼ねていますので、次の2つのアプローチを積極的に行うように心がけます。

2つのアプローチ

  1. 聴き手からのアプローチ
    「あなたの話をもう少し聴かせてもらっても良いですか?」
  2. 話し手からのアプローチ
    「もう少し話したくなりましたので、〇〇さん聴き手になってもらっても良いですか?」

*両アプローチとも、指名を受けたメンバーは無理に応じる必要はありません。

 両アプローチとも、聴き手はフォーカシングを意識して聴きます。具体的には2つの技術を使います。
 一つは「伝え返し」です。話し手の言葉を注意深く聴きながら、気持ちが語られたなら、その言葉を伝え返します。そうしながら聴き手は話し手の体験を追体験していきます。
 ただ、伝え返しのそのタイミングを掴むのは、最初のうちはなかなか苦労します。話し手にフォーカシングの心得がある場合、話し手の方で気持ちを語った後に間を開けてくれますから、やりやすいでしょう。話し手のほうから「ここで今の言葉を伝え返してもらえますか?」と聴き手にお願いする場合もあります。これはフォーカシング心得のある話し手が聴き手をトレーニングする際に使う「アズ・ティーチャー」という技術です。あるいは世話人がコーチとして「今の言葉を伝え返してあげてください」と指示する場合もあります。
 そのように伝え返しをしながら追体験していくと、話し手は徐々に一番言葉にしたかった核心にたどり着いていきます。人は最初から一番言いたいことがわかっているわけではないのです。話しているうちに、上手に聴いてもらっているうちに、そこにたどり着くのです(これがフォーカシングで最も重視しているプロセスです)。そしてそれを言い得たときに、話し手の内側にある感じが生じます。そのとき聴き手の内側にも同じような感じが生じます。これを追体験的共感と言います。
 この追体験的共感を話し手に伝えるのが2つ目の技術です。例えば、「あなたのお話を聴かせてもらって、今私のお腹の底の方に何か熱い塊のようなものを感じています」というような伝え方をします。
 それは聴き手にとってまさにぴったりな表現かどうかはわかりません。しかし、その表現を聞いて、話し手の中に何か変化が生じ、新しい言葉が生まれてくるものです。
 小説を読んでいて、非常に自分の心を揺さぶる表現に出会うことがあります。それをオーダーメイドに行うのがこの技術と言えるかも知れません。

聴き手の2つの技術

  • 伝え返し
    次第に話し手が一番言いたかった「核心」にたどり着いていく。
  • 追体験的共感
    聴き手の内に生じた“感じ”を伝えることで、話し手の内に新鮮な変化が生じる。
オブザーバーの役割

 さて、話し手と聴き手の真剣勝負のようなやり取りの間、他のメンバーはオブザーバーとして二人をじっと見守ります。割って入るようなことはしません。しかし傍で聴いているだけで大いに刺激されることがあるはずです。
 二人の話が一段落したなら、今度はオブザーバーの出番です。聴き手ほどではないかも知れませんが、それぞれのオブザーバーの内側にもある程度の追体験的共感が生じているものです。それを話し手に伝えてみてください。それもまた話し手の内にさらなる変化を引き起こす可能性があります。
 オブザーバーは聴き手よりも余裕がありますから、その分「自分の感想」を交えながら聴いているものです。追体験と自分の体験が混じり合うのです。そうした感想を述べることで、グループの誰かが影響を受け、それが「聴き手からのアプローチ」や「話し手からのアプローチ」に繋がっていくこともしばしばあります。どんな言葉もどんな表現も無駄にはなりません。このグループの中では全てが影響しあっています。この現象をフォーカシングでは「クロッシング」と呼んでいます。
 ところで、追体験と自分の体験が混じり合う割合はその人の心のすっきり度と、心の中の「聴くスペース」の広さに依るところがあります。日常的に聴き役になることが多い人は聴くスペースが広くなっていることでしょう。しかし聴くスペースの裏側で自分の気持ちが溢れ出しそうになっていることもよくあります。やはり心をすっきりさせる必要があるのです。たまには話し手になってしっかり聴いてもらうことをお勧めします。つまり、何度もフォーカシングを受けることで、次第にすっきりした心で聴けるようになります。これが本物の聴き手なのです。

 終了予定の時間の20分前くらいに振り返りセッションに入ります。3分程度瞑想しながら、ここまでのセッションがどんな体験であったかを感じ、瞑想後一人ひとり語ります。