自力と他力

 自力、他力という言葉があります。一般的には自分の力でなんとかするのが「自力」、他人の力を当てにするのが「他力」ということですが、仏教的にはだいぶん意味が違います。

 「他力」というのは仏の力に頼ることです。そして「自力」というのはやはり自分でなんとかしようとすることなのですが、仏の力に比べたら、自力なんていうのは、幼い子が親の力なしで食事もできないくせに自分は何でもできるみたいな勘違いをしているのに似ているわけです。

 例えば呼吸を考えてみたらよくわかります。呼吸しているのは自分の力ではありません。生命の力ですよね。心臓を動かすのも食べたものを消化するのもそうです。こういうのは全て他力です。絶対的な力であって、それ無しでは一瞬も生きられませんし、世の中も存在し得ないようなそういう絶対的な力です。