気づきは失われない

一心塾だより 第6号

 サンガの中でいろいろ質問をいただき、答えながら「あー、これ大事だな」と思うことがいくつかありました。
 まず、フォーカシングで伝え返しするとき別な言葉で言い換えてもよいかという質問。これは相手が使った言葉を確実にそのまま伝え返せる技量をまず鍛える必要があります。その上で、ちょっと意図的に言い換えるのは効果的だと思います。しかしまずは正確な伝え返しができるようになりましょう。そうでないと相手がその言葉を使った背景にあるフェルトセンスをつかむことができません。
 ヨーガの呼吸はどうあればよいのかという質問。アーサナのときの呼吸を細かく指定する指導者もいますが、私が考えるマインドフルネス・ヨーガでは、呼吸は常に自然のままです。その自然のままの呼吸をずっと観察し続けます。観察することで自動的に一番望ましい呼吸になります。もちろん呼吸法の練習では長い呼吸や素早い呼吸、腹式呼吸、胸式呼吸、片鼻交互呼吸などを練習し、呼吸の力そのものを鍛えることは怠りません。十分な呼吸の力があるから状況に応じた望ましい呼吸に入れるということは言えるかもしれません。
 次に、気づきは生きている限り失われることがないということ。これは質問があったわけではないですが、話がそういうことに及びました。例えば災害などで大切な人や故郷を失ったり、怪我で体が不自由になったりした場合、大変なショックを受けて、初めてそれらに依存していた事がわかるということがよくあります。しかし気づきは生きている限り、起きている間は失われてはいません。余計な情報や感情や習慣に惑わされることなく、純粋に気づきの眼でものごとを見、自らの呼吸や心を観察する人は、すべてが変化の中にあることにすぐに気づくでしょう。そして今自分がやれること、やるべきことは何かということにも気づきます。マインドフルネスやフォーカシングはそうした気づきを加速します。

一心塾だより

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