批評家

一心塾だより 第37号

フォーカシングはうまくできない、自分には向いていないと思っている人は、「批評家」に悩まされている場合が多いと思います。

 批評家とは、常に自分の頭の中に存在して、自分を批判する声です。「どうせお前にはできっこない」、「なんてダメな人間なんだ」、「何をやってもダメなんだから」、「あんなことする(言う)んじゃなかった、どうせいいようには思われないんだから」・・・。

 おそらく幼い頃に近しい人から言われていた言葉や態度が脳に焼き付いて、それ以来今日まで、自らの行動規範になっているのでしょう。ちなみにフロイトはこれを「超自我」と呼びました。自らの内側に批評家が住んでいると、生きづらいものです。しかし幼い頃からずっと一緒なので、距離が近すぎて、批評家がいない世界というものを想像することは難しいと思います。フォーカシングの最中でも、頭のどこかで「こんな事やっても無駄だ」とか言ってきて、だんだん思考優位になってしまうこともあるでしょう。

 批評家に対しては毅然とした態度を取る必要があります。「少し黙っていなさい」、「あなたの言うことは私の役には立っていません」。そしてはっきり距離を取るようにしてください。ただ、今までもの事に慎重でいられたのは批評家のお陰もあるかもしれませんから、こんなふうに言っても良いでしょう。「今までありがとう。あなたの居場所は、あの隅っこ辺りに確保しておきます。必要があるときには声かけるからね。それ以外のときはおとなしくしといてね」

 批評家は大きな影響力を発揮して、私たちの主体性を脅かします。私たちの本当の主体性はフェルトセンス、つまりからだの実感の方にあることを、フォーカシングに親しむに連れ、信じるられるようになります。そうなれば、批評家を静かにさせることができます。

 マインドフルネスの態度も重要です。日常においてふと批評家が思考に侵入してきたとき、素早くそれに気づき、「やあ、批評家さんいらっしゃい。来てくれてありがとう。じゃあさようなら」と丁寧に帰してあげます。これをしばらく続けることでも、徐々に批評家の来訪は遠のいていくことでしょう。

一心塾だより

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