大丈夫!

一心塾だより 第48号 

 1997年に『真理への解放』(たま出版)という本を共訳者として訳しました。世界に知られるヨーガ道場であるシバナンダアシュラムの総長、スワミ・チダナンダ大師の講話集です。その46章「友好的な世界の中に私達は生きている」は、大好きな章です。

 その中に次の一文があります。「私達はそこに存在しているあらゆるものが、何としてでも私達を助けようとしてくれているような友好的な世界のなかに住んでいるのです。そこにあって見ることができ、聞くことができ、触れ、味わい、嗅ぎ、考え、想像できるあらゆるものは、私達が成長できるように何とか手助けしようとしてくれているのです」

 訳していて私は雷に打たれたようになりました。空気が私を生かそうとしている。食べ物が私を生かそうとしている。机や椅子が私を生かそうとしている。そのように本当に感じられ、感謝の涙が流れました。この感覚は今もずっと私の体験の底流にあり、私は孤独ではなくなりました。

 この考え方は、宇宙の万物を生み出している原理と、私達の最も奥深い、最も純粋な意識が同一のものであるというヨーガの哲学(ヴェーダンタ哲学)から来ていています。

 難しい哲学を紐解かなくても、空気や食べ物なしで私達が生きていけないのは明らかです。でも、それらが微細な意識を持って、私達に「生きろ、気づけ」と語りかけていると考えたことがあるでしょうか。そう考えてみたら、大変ありがたいことではありませんか。

 表面に現れる人間の意識は粗雑です。ときにマイナスの感情に満ちていたりします。そんな表面的な意識から投げかけられる言葉や態度に一喜一憂しているのですから、まあ、私達は大したことない、愛すべき弱い存在です。それは仕方ありませんし、それでも良いと私は思うのですが、たまには物言わぬ身近な存在の微細な意識を感じて見ていただければと思います。それらは私達に、こうも語りかけています。

「大丈夫!」

dav