ロジャーズの3条件とフォーカシング
一心塾だより 第23号
有効なカウンセラーであるための中核的な条件として、ロジャーズが「自己一致」、「無条件の肯定的関心」、「共感的理解」という3条件を示したことは非常に有名で、ロジャーズ派のカウンセラーはこれを金科玉条のごとく守ろうとしてきました。
「自己一致」とは、心と言葉がうらはらではいけないということです。しかしフォーカシングに馴染んでいる者は、心と言葉が簡単に一致しないことをよく知っています。少なくとも両者のズレに敏感であるよう心がけることが重要でしょう。
「無条件の肯定的関心」とは、今向き合っている相手に対して、どんな偏見も排除して肯定的な関心を向けるということです。これはわかりやすいですし、そうであるべきだと思います。
「共感的理解」は、技法的には相手の言葉の伝え返しとなりますから、「オウム返し」と批判されることが多いのですが、重要なのは理解です。「私はあなたの気持ちをこのように理解していますよ」ということが相手に伝わればいいのです。
「共感」というと、相手と同じ気持ちにならなければいけないように取られますが、相手のマイナス感情と同じ気持ちになろうとすると、聴く方は疲弊して、聴くのが嫌になります。しかし理解が単に知的なところにとどまっていたのでは、相手は理解されたようには感じません。
そこで重要になるのがフェルトセンスです。フェルトセンスのレベルで理解されると、それだけで相手の心に変化が生じますし、またカウンセラーも疲れません。例えば、心の天気に描かれた絵を見て、その感じを理解することはフェルトセンスのレベルの理解と言えるでしょう。私はこれを「体験的理解」と呼んでいます。もしかしたらロジャーズが「共感的理解」という言い方で、表現したかったのは「体験的理解」のことではなかったのでは?と考えています。
フォーカシングのリスナーが徹底して鍛えるべきところは「体験的理解」です。それは技法ではありません。表には現れない心の柔軟性です。日々のセルフフォーカシングによって鍛えられるところです。