体験過程尺度について

一心塾だより 第22号

 リスナーをする上でも、日常で人の話を聴く際にも、以下の「体験過程尺度」*を知っておいて、それに当てはめながら話を聴く習慣をつけると、フォーカシングの理解やリスニングの上達に役に立つと思います。

<出来事中心の段階>
1,(体験過程尺度が非常に低い)出来事を語っているが、気持ちの表現は見られない。
2,(低い)出来事を語る中に気持ちの表現があるが、気持ちは出来事への反応として語られている。

<気持ち中心の段階>
3,(中程度)出来事への反応としてではなく、自分のあり方を表明するように気持ちが語られている。豊かな気持ちの表現が見られるが、そこから気持ちを吟味したり、状況との関連付けなどを試みたりはしない。

<創造過程の段階>
4,(高い)気持ちを語りながら、その気持を自己吟味したり、仮設を立てて気持ちを理解しようとしている。話し方には沈黙が見られることが多い。
5,(非常に高い)ひらめきを得たように、気持ちの側面が理解される。声が大きくなる。何かを確信しているような話し方に変化することがある。

 1~2辺りの話し方をしている人に対しては、「それで、それについてあなたはどう思うの?」と問えば3に行くでしょうし、3の段階のときに「どうしてそう思うんだろう?」と問えば4に行くでしょう。もしこれらの問いに、相手が即答するようであれば、「本当にそれでピッタリかなあ」と問うてみるのも良いでしょう。セルフ・フォーカシングにおいても同様に自分に問うてみたら良いと思います。

*三宅麻希、池見陽、田村隆一(2007)「5段階体験過程スケール評定マニュアル作成の試み」人間性心理学研究25-2