「善性・動性・暗性」心の3つの要素

 アーユルヴェーダという言葉を聞いたことがあるでしょうか。インド伝統医学のことです。人は、風(ヴァータ)・火(ピッタ)・水(カパ)という生命維持に欠かせない3つの要素をある割合で持って生まれると考えます。その人なりの生まれつきのバランスがあるわけです。このバランスが崩れると調子を悪くするので、生まれつきのバランスを保つよう生活指導や施術をするのがアーユルヴェーダの治療です。インドでは今も息づく医学です。

 そしてインドの伝統では、心のほうも3つの要素で構成されていると説明します。善性(サットヴァ)・動性(ラジャス)・暗性(タマス)です。

 暗性は「安定」、「眠気」、「鈍感さ」などの心の状態を作り出します。暗性が過剰になると「怠けたい」、「落ち込み」、「不活発」というネガティブな状態になります。動性は「活発さ」、「創造性」などを心にもたらしますが、過剰になると「攻撃性」、「激情」、「結果へのこだわり」などが現れてきます。善性は「優しさ」、「思いやり」、「気づき」、「調和」、「感謝」、「純粋さ」などを心にもたらします。善性は過剰になっても問題はなく、むしろ暗性や動性の過剰を抑制します。

 ですから私たちは善性を高めることを常々心がけるようにしたら良いでしょう。ヨーガはアーサナ、呼吸法、瞑想ともに善性を高める作用があります。というよりも、そのための方法として、数千年の昔からヨーガが開発され、実践され、そして広められてきたと言えるでしょう。

 ところで、私たちは日常的に「ネガティブ」、「ポジティブ」という言葉を使います。これは陰か陽か、二極の方向しかないので、心の状態を捉えるのには単調になってしまいます。善・動・暗の三要素で捉える方が広がりや深みが生まれる感じです。ネガティブは暗性に当てはまると考えて良いと思いますが、ポジティブは動性・善性どちらに当てはまるでしょう?

 私は善性を「ポジティブ」に当てはめ、動性は「アクティブ」と呼んだら良いのではないかと考えています。

 ポジティブであれば、必要なときにはアクティブになれるでしょうし、必要であればネガティブにもなれるでしょう。時には鈍感で、静かにじっとしていることが大事なこともあるでしょうから。善性の要素は、暗性や動性が優位になっている心の状態に対しても、「いいね」と気づくことで調和をもたらしてくれます。本当のポジティブとはそういうことではないかと思います。