記憶を繋いで物語を作っている

空気が澄んでいるので、星がよく見えます。星座に詳しいわけではないですが、北斗七星とかオリオン座くらいはわかります。電気のない時代は星空はもっと身近だったんだろうなと思います。星と星を線で結んで物語を紡いでいたわけです。

 一度そういう線のつなぎ方をすると、それ以外のつなぎ方を思いつかなくなるもので、北斗七星なんて名前がついたりすると、本当にあのひしゃくの形しか見ようとしない。

 でもよく見れば、周りにいっぱい星はあるわけです。別のつなぎ方もいくらでもできるのでしょう。

 私たちは記憶を繋いで自分の中で物語を作っています。自分が不幸な人間とか、幸せな人間とかいうのも自分が作った物語がそういうふうに自分に思わせているわけです。そして線で繋がれた記憶はよく覚えているわけですが、繋がれていない記憶は忘れ去られてしまいます。

 私が雑念を大事にしているのは、埋もれた記憶がふと出てくるからです。出てくると自動的に頭の中で記憶の線がつなぎ直されます。いつのまにか今までとはちがう物語が再構成されます。そういうことも雑念の働きです。